(コメンTOMO2005年8月8日)
【No.53】

障害者自立支援法案、廃案に

■衆院解散に伴って廃案
 障害者自立支援法案(以下、自立支援法案)が正式に廃案となりました。本日(8月8日)、参議院本会議の直後に開かれた厚生労働委員会理事懇談会の席上で、自民党より正式に「衆議院の解散が決定的になったのに伴い、障害者自立支援法案については廃案としたい」旨の見解が示されたのです。去る2月10日に衆議院に上程された自立支援法案は、ちょうど半年の経緯をたどって姿を消すことになりました。

 国会のルールとして、衆議院が解散となった場合には、上程中または審議中の法案はすべて「廃案」になるとのことです。そういう意味では、いわば政治的なアクシデントによって自立支援法案も廃案となった、こんなふうに言えるのかもしれません。たしかに、直接のきっかけは衆議院の解散ということになるのでしょう。しかし、廃案という事実はそんなに単純なものではなさそうです。廃案の背景に何を読みとるべきか、廃案という事態を原点に今何を成すべきか、これらについて少しばかり考えてみたいと思います。

■「廃案」をどう評価するか
 まず、廃案となったことについての評価ですが、結論から言えば「あるべき姿」といえるのではないでしょうか。きょうされんは、閣議決定直後から「慎重審議を、徹底審議を」と唱え、参議院に移された以降は明確に「継続審議を」と主張してきました。ここで言う「継続審議を」というのは、衆議院で成立したという事実と、参議院での与党優位という現実的な判断から、「せめて次回国会まで結論を延ばし、これによって原案修正の可能性を探求すること、また今月から本格的に着手されることになっていた政令・省令に牽制作用をもたらしたい(採決が秋に控えていればおかしな政令・省令はつくれないはず)」、こんな意味が込められていたのです。元々、「応益負担制度」導入を真髄とする法案であり、国会審議を通してますます矛盾や疑念が深まっていったことを併せ見れば、「出直すべき」は私たちの見解とも一致するものであり、廃案は想定以上の成果と言えるのではないでしょうか。

■直接のきっかけは解散だが……
 次に、廃案という事態をどうみるかということです。結論から言えば、郵政民営化法案否決という政治的アクシデントで片付けてはいけないということです。衆議院解散というこの日まで自立支援法案を採決させなかったことが(参議院で)、最大のポイントなのです。そもそもの厚労省の思惑は、6月19日までの会期中に衆議院のみならず参議院でも可決させることを想定していたのです。これが成らないとみるや、今度は延長国会の早い時期での成立をもくろんでいました(遅くとも7月中)。こうした思惑がことごとく外れたのです。外れたことの最大の理由は、障害者団体、民間関係者によるプレッシャーだったのです。

 全国レベルでいえば、「5.12フォーラム」(6600人参加)や「7.5緊急大行動」(11000人参加)、重ねての国会議員への要請活動などが、大きな威力を発揮したのではないでしょうか。また、全国各地で相次いで、多彩に、幅広い連携の下で催された集会やフォーラムも効力があったように思います。加えて、個人や法人、各種の事業体(作業所やグループホームなど)、市町村ならびに議会などからの要望書や意見書提出も随分と国会審議に影響したにちがいありません。このような、民間のかつてない運動に、与党の議員からも「継続が妥当かな」、こんな声も囁かれていたのです。

■改革運動の新たなスタート台
 さて、問題は今後をどう展望するかということです。既に厚労省側からは、「秋に臨時国会が開かれれば自立支援法案を再度提出したい」、こんな意向も示されているようです。たしかに、現行の障害者政策が行き詰っていることは自明のことであり、何としても好転させなければならないことは関係者の一致した見解です。とは言うものの、今回のような自立支援法案では好転とはおおよそ縁遠く、この程度の法案の再提出というのであれば、再度反発をかうことは必至です。廃案に至った真の理由が政治的なアクシデントではなかったということを、厚労省はしかと認識すべきです。

 ここは、じっくりと構えることが大切ではないでしょうか。改めて、わが国の障害者政策の現状と障害のある人びとが置かれている実態・ニーズを具(つぶさ)に把握すること、基幹的な政策課題(例えば、扶養義務制度のあり方、本格的な所得保障制度の確立、障害定義の見直し、障害福祉法の完全な一元化、社会雇用制度の創設など)のあるべき方向を定めること、これらにエネルギーを傾注させていかなければなりません。と同時に、政策の決定過程のあり方にも思い切った改革が必要です。御用審議会に成り下がっている社会保障審議会障害者部会を健全化すること、併せて障害当事者(団体)の意向を反映させる仕組みの開発なども求められます。むろん、放っておけない障害者政策の遅れですが、だからといって今回の自立支援法案のような轍を踏んではなりません。決して財政問題に煽られるのではなく、後世に恥じない本格的な改革を果たしていかなければなりません。「じっくりと構える」、その意味は半年や一年間では無理だということです。無駄な時間を省きながらも、「納得のいく検討過程」「これこそ私たちの法律」、このことをめざしていこうではありませんか。

 2005年8月8日、それは私たちにとって忘れ得ぬ日になることでしょう。障害者運動史に燦然(さんぜん)と刻まれるにちがいありません。でも、改革運動の新たな始発点となってこそ、さらに光を放つのだということも忘れてはなりません。

(TOMO太郎)

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