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(コメンTOMO2009年4月3日)
【No.84】
自立支援法見直し法案、国会上程
〜応益負担の火種、色濃く〜
■本当に応能負担に戻ったと言えるのだろうか
3月31日、障害者自立支援法の見直し法案が閣議決定を経て国会に上程された。4月中には審議入りする見込みだ。改正法案全体の評価は今しばらく時間を要するが、利用者負担がどうなったかについてはこの段階で一言述べておきたい。
与党と厚労省は「利用者負担については、能力に応じた負担とし、法第29条等の規定を見直す。」としているが、本当にそうなのだろうか。与党PTが2月に示した「障害者自立支援法の抜本見直しの基本方針」には「・・特別対策や緊急措置によって改善した現行の負担水準の継続や・・」とあることから、応益負担を応能負担に戻すと言いながらも、軽減策を受けている場合の負担額は現在と変わらないということのようなのだ。一部には「応益から応能への方針転換」という宣伝を歓迎する向きもあるが、事はそう単純ではない。
■支援費制度時代の負担はどうだったか
ほとんどの人が利用料0円だった支援費制度時代の応能負担の仕組みを思い起こしてみよう。当時、「市町村が障害者に対して支給する金額(A)」は以下のように決められていた。
(A)=「国が定めた支援に必要な額」−「利用者負担の額(B)」
(B)は、「本人の収入」から「必要経費」を引いた額によって判定されていたのだが、この「必要経費」として、生活保護法による基準生活費(生活扶助費第1類および第2類の合計額)の1.5倍の額が認められていたのだ。基準生活費の1.5倍だけでも、本人収入の大部分を占める障害基礎年金の額を超えることから、大多数の人は利用料が発生しなかった。生活する上で最低限必要な費用の根拠を生活保護基準に求めていたことと、障害に伴う余分な支出に配慮してその1.5倍を必要経費とした点は、障害のある人の収入や生活の実態に即していたといってよい。
■自立支援法ではこうなった
それが、自立支援法では(A)の決め方が以下のように変わったわけだ。
(A)=「国が定めた支援に必要な額」×90/100
そのため、残りの10/100が原則一律に「利用者負担の額(B)」となった。ただ、定率の負担だと額が青天井に膨らむ場合もあることから、家計に与える影響などを考慮して負担の月額上限額を定めた。この上限額は一応、収入に応じた区分を設けてはいるが、額そのものが最高で37200円、生活保護の人を除けば最低でも15000円とされ、障害のある人の収入状況への配慮がまったくなかったのである。
これに対して全国で反対運動が巻き起こり、法施行後3年の間に2度にわたって軽減措置が講じられたわけだが、その結果、非課税世帯の場合は利用料の月額上限額は3000円もしくは1500円まで下がった。与党と厚労省は今回の改正案において、この負担水準をもって応能負担と呼んでいるようだが、もともとは応益負担の下で全国の運動に押される形で講じた一時的な軽減策だったのだ。
■今回の改正案は従来の応能負担とは似て非なるもの
それでは今回の改正案はどうか。まず、(A)の決め方は以下のようになった。
(A)=「国が定めた支援に必要な額」−「利用者負担の額(B)」
※(B)は負担能力に応じた負担を原則として厚労大臣が額を決めるとしているが、サービス利用量が少ないために、厚労大臣が決めた額よりも「国が定めた支援に必要な額」の1割負担の方が低い場合には、1割の方を(B)の額にするとしている。低い方の額を負担するという意味では一見、望ましく思えるが、わざわざ1割という応益負担の枠組みを残している点に注意する必要がある。
この計算式は支援費制度時代と同じであり、厚労省も「条文の考え方は支援費をベース」に戻したとしている。ただ、重要なのは(B)をどう決めるかだ。本当の意味で支援費制度時代に戻すということは、ここを支援費と同じにするということでなければならない。
しかし(B)の決め方は支援費制度時代とは似て非なるものとなってしまった。第一に、家計の負担能力を考慮して厚労大臣が決めるとしているが、実際の負担額は現在の水準のままであるという点だ。生きるために不可欠な支援を受けるのに利用料を支払うことが前提となっているのは、障害のある人の収入水準を考えれば本来の応能負担とは言えない。財政状況によってはこの金額を厚労大臣の一声で簡単に変えることができるという点も問題だ。さらに、支援費制度時代は(B)を決めるのに成人の場合は本人の収入に着目していたのが、自立支援法以来、法文上は家計に着目することになったため、本人以外の家族の収入も収入認定する余地を残してしまった。改正案でも「家計の負担能力その他の事情をしん酌して」とあるのは看過できない。
第二に上記の※印に記したように、厚労大臣が決める額よりも1割の額が低い場合には、低い方が(B)になるという点だ。わざわざ「1割の額」という応益負担の枠組みを残す必要はどこにあるのだろうか。支援費制度時代の応能負担においては影も形もなかった規定であり、「介護保険との統合は前提としない」と言いながら、統合への火種を残したとも考えられる。介護保険と障害保健福祉施策の統合という道筋の中で自立支援法が生まれ、応益負担が導入されたという経過を踏まえれば、この点は今後も細心の注意を払う必要がある。
■障害者自立支援法訴訟の新局面とも重ねて
新年度を迎えると同時に、失業者の増大や生活保護の母子加算完全廃止、国民年金保険料値上げ、介護保険の要介護認定改悪など、国民全体の暮らしは一層の困難を強いられている。こうした時期に示された自立支援法改正案だけに、その評価は慎重でなければならない。表層的な美辞麗句に踊らされることなく、これまでの経過や事の本質をしっかりと見極めたいものである。
また、新年度初日の4月1日には障害者自立支援法訴訟の第2次提訴が行われ、全国10の地裁で28名の当事者らが応益負担は違憲であるとして提訴した。これで、この訴訟の原告は第1次と併せて58名になり、新たな局面を迎えたことになる。奇しくも、その前日に自立支援法の改正案が国会に上程されたわけで、改正案が言う応能負担が本来のそれとは異なることを明らかにする好機でもあるわけだ。障害分野において応益負担を根絶やしにすることは、必ずや社会保障全般を好転させることにつながる。障害団体の連携はもとより、国民生活にかかわる各分野ともしっかりと手を携えることの重要性は益々大きい。
(英TOMO)
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