(コメンTOMO2009年4月6日)
【No.85】

自立支援法見直し法案が示す「応能負担」のトリック
〜看板の掛け替えでごまかしてはいけない〜

■能力に応じた負担額はどの程度になる?

 前回に引き続いて、3月31日に国会に上程された障害者自立支援法の見直し法案が示した利用者負担について考えてみたい。見直し法案では、「市町村が障害者に対して支給する金額(A)」は以下のように決めるとしている。

(A)=「国が定める支援に必要な額」−「利用者負担の額(B)」

※(B)は負担能力に応じた負担を原則として厚労大臣がその額を定める。ただし、サービス利用量が少ないために、厚労大臣が決めた額よりも「国が定めた支援に必要な額」の1割の方が低い場合には、低い方を(B)の額にするとしている。

 まず、負担能力に応じて厚労大臣が定める利用者負担の額(B)はどの程度の水準になるのであろうか。法の見直しについて検討してきた社会保障審議会障害者部会は、昨年12月にまとめた報告の中で「・・現在の利用者負担の仕組みについて、所得に応じてきめ細やかな軽減措置が講じられていることについて、国民に明確にしていくことが必要。」と述べており、また与党PTも「障害者自立支援法の抜本見直しの基本方針」で「・・特別対策や緊急措置によって改善した現行の負担水準の継続や・・」としていることから、現在の負担水準がそのまま適用される可能性が高いとみられる。仮にそうだとすると、概ね以下のように示すことができる。

図1

 収入によって負担額を決めていることから、厚労省と与党は上記の負担方式を「応能負担」と呼んでいるわけだが、大多数の人が無料だった支援費制度時代から見れば、大幅な負担増であることに変わりはない。ただ、障害のある人の現実の収入状況をふまえた配慮が全く不十分であるという点を除けば、この形は応能負担と呼べなくはない。

■「1割相当額が低い場合には、低い方の額を負担」とは応益負担のこと

 問題は、上記の「※印」だ。法文上もこの部分はカッコ内に記されていて、何か、特別な場合のような印象を与えているが、これを反映すると、負担方式は以下のようになる。

図2

 つまり一定額までは明らかに応益負担(定率1割負担)が優先されて、負担能力に応じて厚労大臣が定める額が負担の上限額になっているわけだ。これは、応益負担をベースとした現在の負担方式とまったく同じということになる。まさに看板の掛け替えであり、応益負担を「応能負担」と呼び変えたに過ぎないではないか。

■応益負担を根っこからなくすために

  それでは、どうすればよいのか。ここでは2点の指摘をしておく。
  まず第1点目に、利用者負担について規定する新しい第29条第3項の第2号から、以下の部分を削除する必要がある。
『(当該政令で定める額が前号に掲げる額の百分の十に相当する額を超えるときは、当該相当する額)』
  これは冒頭の計算式の「※印」を規定した部分であり、応益負担の火種を残すために盛り込まれたのであろう。応益負担を根っこからなくすには、まずこれをなくさなければならない。
  第2点目に、厚労大臣が負担額を決めるにあたっては、支援費制度時代のように収入認定の対象は本人収入に限った上で、収入から必要経費を差し引いた額によって、障害のある人の収入が少ないことを十分に配慮した負担額を決めるべきである。その際、やはり支援費制度時代同様に、生活保護法による基準生活費(生活扶助費第1類及び第2類の額)の1.5倍の額を必要経費として認める必要がある。現在の負担水準を横滑りさせるようでは、障害のある人の収入状況を配慮したとは言えない。
  働くことや生きるために不可欠な支援に利用料を課すことを前提とするという道とは決別し、一旦は支援費制度時代の応能負担に戻すべきである。その上で障害のある人や団体、関係者の実質的な参画によって、負担のあり方について必要な時間をかけて協議するべきであることを、改めて強調しておく。

(英TOMO)

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