(コメンTOMO2009年9月2日)
【No.89】

自立支援法の廃止を実現し、新たな法制度の確立の準備を
〜総選挙結果をうけて〜

■政権交代の光と影

 第45回衆議院選挙は歴史的な結果を迎えた。自民党の決定的な下野は戦後の日本の政治にとって初めての経験であり、障害保健福祉施策にも大きな影響を与えることになる。
振り返れば前回の総選挙は、国民全体が小泉内閣の「官から民へ」という謳い文句に踊らされた感が強い中、自民党と公明党の与党で2/3の議席を獲得するという勢いだった。障害者自立支援法もこの勢いに乗っかって成立したわけだが、あれからわずか4年で真逆の結果を迎えことになる。自立支援法の直後に成立した後期高齢者医療制度も、新しい政権の下では廃止される見通しであり、生活保護の母子加算も復活される可能性が出てきた。小泉内閣の下で強行された社会保障制度の削減に対して、国民は明確に「ノー」という意思を表明したわけだ。ただ、民主党がこれほどの議席数を獲得したという結果は、小選挙区制度の問題点ともあいまって、空恐ろしい感がある。

■新政権に問われていること

 それでは、これからの障害保健福祉施策はどうなるのであろうか。新政権を担う民主、社民、国民新の各党は「自立支援法の廃止」を公約に掲げていたわけで、これは何としても実現させなければならないが、一筋縄ではいかないだろう。そもそも自立支援法の発端は、財源不足を理由として現行の介護保険制度と障害保健福祉施策を統合することにあったわけで、政権が変わるとはいえ厚労省がこの統合方針を簡単にあきらめるとは思えない。この点の官僚の巻き返しは必至であろう。また、もともとは民主党自身も介護保険との統合に肯定的な見解を示していたという経過もあり、新政権になったからと言って自動的に事態が好転するわけではないだろう。自立支援法の廃止という目的を達成するためには、これまでのような運動を従来以上の質と量をもって展開する必要があるのだ。社会保障制度はお上が与えてくれるものではなく、運動によって勝ち取るものであるということは、歴史を振り返れば明らかだからだ。
  以上を踏まえて、新政権には以下のことを注文したい。まずは、10月下旬に召集されると言われている臨時国会での鳩山新首相の所信表明演説において、自立支援法を廃止して新たな法制度を構築することを明言し、とりわけ応益負担と日払い方式の廃止については臨時国会で必ず実現させるべきである。次に、年末にかけての来年度予算編成に当たり、自立支援法施行後の実態を改めて把握することと報酬単価や障害程度区分などの問題点を改善する必要がある。そして、2年程度かけて自立支援法を完全廃止への備えと新法の検討にも着手しなければならない。このような自立支援法の完全廃止までのプログラムの全容を、この秋に明示することが求められているのである。また、民主党は今年度補正予算の組み替えや来年度予算をゼロベースから見直すことを表明しており、この過程で障害保健福祉分野への予算配分の大幅な増額に道を開くことができるのかどうかも注目点となる。
  更に、その後の中長期の課題を解消するに当たっては、民主党が前の国会に提出していた「障がい者制度改革推進法案」が軸となろう。この法案は5年という期限を設け、その間に障害保健福祉施策を総合的に見直そうというものであった。これの精度を更に高めて具体的な施策にしていくことが求められる。

■当事者の参画で新たな法制度を創造する絶好の機会

 今回の総選挙は、事前から政権交代の可能性が高いと言われてきた。そのためか、旧与党の友好団体と言われた障害団体の中でも選挙前から民主党とのコンタクトを図る動きもあった。しかし、このように時の政権与党にすり寄る形での変わり身の早さとは決別するべきではないだろうか。与党のみとの関係を重視する姿勢が、必然的に政官民の癒着を生み、健全な制度の構築に支障をきたすことになるのは周知の事実である。
  新政権の下で自立支援法に代わる新たな法制度を構築する可能性が開けてきた今こそ、私たち障害団体にとっては新たな制度を創造する絶好の機会である。政治との適切な距離を保ちつつ、障害のある人と障害団体の実質的参画の下で、地域生活を本当の意味で前進させることのできる法制度を確立させることこそが求められている。言わば、自立支援法によってマイナスに追い込まれた障害のある人たちの暮らしを、一旦はゼロに戻した上で、本当のプラスに転じさせるチャンスなのだ。
  きょうされんとしても、そのために積極的な役割を果たすべく、9月18日に行われる第32回総会において、新政権の下での今後の法改正についての見解を示す予定である。

(英TOMO)

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