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(コメンTOMO2009年9月14日)
【No.90】
「みんなのための法律」をみんなでつくる絶好のチャンス
〜3党連立政権合意の「自立支援法の廃止」に向けて〜
■廃止と新制度創設の合意と背景
9月9日、3党連立政権の「政策合意」が成立・調印に至った。注目すべきは、合意した10項目の政策の「5.社会保障制度の充実」に、「『障害者自立支援法』は廃止し、『制度の谷間』がなく、利用者の応能負担を基本とする総合的な制度をつくる」が明記された点である。新たな政権の基本政策に、わたしたちの切実な要望が盛り込まれたことを、まずは歓迎したい。
8月の総選挙のマニフェストに「自立支援法の廃止」を盛り込んだのは、民主党、共産党、社民党だった。国民新党の政策は「自立支援法の応益負担の見直し」にとどまっていた。そのため新政権の政策合意は、「自立支援法の応益負担の見直し」にとどまってしまうのではないかと危惧したが、結果は「自立支援法の廃止と新制度の創設」まで踏み込んだ合意となった。
じつは2005年5月頃まで、民主党内には「介護保険と障害福祉の統合」に同調する意見もあった。つまり、自立支援法制定の背景を評価する意見が民主党内にあったのである。それが、「自立支援法案に反対する」という基本姿勢に一本化したのは、自立支援法案の本格的な国会審議に入った同年6月以降だった。その決定打になったのが、同年7月5日の「7.5緊急大行動」で日比谷公園を埋め尽くした11,000人の声と行動であった。
それ以来4年半にわたって、多くの障害のある人々とその家族・関係者は、自立支援法の出直しを求める運動を粘り強くひろげてきた。こうした運動があったからこそ、新政権の「自立支援法の廃止と新制度の創設」の政策合意に結実したのである。
なお、今般の総選挙を受けて、民主党を中心とする絶対多数の与党の誕生となったが、障害関連政策の進展という点では安心できない。さまざまな分野・領域の問題が怒涛の如く持ち込まれ、既に優先順位付けが始まっているという。新政権の誕生で自動的に障害分野に光が当てられるというものではない。引き続きしっかりとした運動が必要である事を付言しておく。
■廃止と新制度創設へ向けての視点と手順
さて、政策合意された「自立支援法の廃止と新制度の創設」は、今後どのような手順ですすめるかが当面の重要な課題になる。そのすすめ方について、3つの視点を提起したい。
第1に、10月末から開かれる臨時国会において何を決めるかである。自立支援法に変わる法制度がないなかで、今すぐ廃止することは現実的ではない。だからといって新しい法制度ができるまで、現状の自立支援法をそのまま継続することも正しくない。そのため臨時国会では、以下のことを決める必要がある。
まず、自立支援法の最大の欠陥である応益負担の廃止と日額払いを月額払いに戻すことを決めることである。合わせて、自立支援法の廃止期日ならびに新法の施行期日と制定方法を明らかにすることである。その期日は、2012年4月が適切だろう。なぜならば、現行の負担軽減策と新事業への移行期限が2012年3月だからである。このスケジュールであれば、混乱等が生じることなく新しい法制度に移行することができよう。厚労省を除いて、誰からもこの手順に異論はないであろう。
廃止するからといって、ただちに障害程度区分や事業体系など全般的な制度の見直しに踏み切ることは無理がある。それこそ、大混乱が生じてしまうだろう。
第2に、新しい法制度をつくるプロセスに、当事者や関係者が実質的に参加できる仕組みをつくることである。民主党の掲げた「脱官僚」は大賛成だ。強力な官僚主導による法制度の制定は、抜本的に見直すべきだ。厚労省は「社会保障審議会で十分な検討を経た」というが、同審議会のあり方こそ疑問が多い。果たして自立支援法案が国会審議に付されたとき、自立支援法の詳細を理解して賛成した与党議員は何人いたのだろうか。
新しい法制度を制定するにあたっては、「みんなが理解しやすい法律を、みんなが参加してつくる」ことが重要である。もちろん、この「みんな」には、障害当事者や関係者だけでなく、国会議員や地方行政関係者、そして国民の代表も含まれる。
第3に、新しい法制度をつくる基本視点である。居宅支援を国庫負担金に組み込んだことや、就労移行支援を制度化した点などは継承・発展させるべきだが、新しい法制度の基本理念や枠組みは、自立支援法を出発点にする必要はまったくない。むしろ国連の権利条約の批准を視野に入れた視点から、まったく「新しい総合的な福祉法」の創設を検討する姿勢で臨むべきだ。
なお「新しい総合的な福祉法」の制定をもって、障害者施策の全般的な問題が解決する訳ではない。民法の改正を必要とする扶養義務制度の撤廃や、本格的な所得保障制度の確立、雇用と福祉の本格的な連携を含めた社会支援雇用制度(仮称)など、障害者施策の基幹的な政策課題などの検討は、「新しい総合的な福祉法」の制定後、ただちに着手する必要がある。
■新たな流れをつくり出す「10.30全国大フォーラム」
自立支援法の成立を強引にすすめてきた厚労省が、同法の廃止をすんなり受け入れるとは思えない。国会対策だけでなく、団体への懐柔までおこなって成立させた厚労省だけに、相当な抵抗があるはずだ。新政権が「脱官僚」を掲げるならば、官僚の巧みな政治工作に屈することなく、「自立支援法の廃止と新制度の創設」にむけて、立法府の責任を毅然と全うすることを期待したい。
一方、動揺や不安もでてくるだろう。たとえば「ようやく慣れてきたのに」という声がある。果たして本当に「慣れた」のだろうか。「慣れた」という人は、「緊急措置」によって、負担上限の月額が1,500円や3,000円に下がったことで、「慣れた」と言っているにすぎない。しかし、いまも自立支援法の基準上限額は37,200円であり、この上限額の負担を強いられている人がいる。しかも軽減措置は、制約を伴い期限が限られている。自立支援法の「本性」は、介護保険の財源調達と財政抑制にあり、軽減措置はその場しのぎの仮の姿に過ぎない。もちろん「請求事務に慣れた」などは論外だ。
自立支援法が施行されたとき、どれだけの人たちが負担の重さに悲鳴をあげたか。法の施行によって、少なくない人たちが自らの生命を絶ってしまったことも忘れてはならない。同じ悲劇を繰り返さないためにも、自立支援法は廃止しなければならない。そして「みんなのための新しい法律」を、みんなでつくる絶好のチャンスが、いま到来している。
「10.30全国大フォーラム」は、まさにその結節点である。すべての障害のある人たちと関係者が「自立支援法を廃止し、新しい法制度の創設」を望んでいることを、すべての国会議員・政府関係者、そして多くの国民に、もう一度力強く訴える必要がある。そのためにも、臨時国会の開会の公算が大きいというこの時期に開かれる「10.30全国大フォーラム」は、総力をあげて成功させなければならない。
そして10月1日には、自立支援法訴訟の第3次提訴を迎える。第3次の予定者を含めると、国を相手取って立ちあがった原告は73名(予定)に及ぶ。たとえ、自立支援法の廃止が実現したとしても、司法の場において「障害福祉に応益負担は相容れない」という結論を導き出すことは、新しい法制度の基本理念を明確にするうえでも大きな意味を持つ。
いまこそ、自立支援法の「本性」を多くの人たちに語り、「みんなのための法律」をみんなでつくる運動を、満身の力を込めてひろげていこうではないか。
(TOMO浩)
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