新着情報2005年1月26日(1)

きょうされん常任理事会
グランドデザインについての評価と課題
(第1次、2005年1月26日)

 はじめに
 1.経過
 2.評価
 1)評価の視点
 2)評価できる側面
 3)問題点
 3.審議・政策検討の進め方についての意見
 4.当面の課題

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はじめに
 障害者自立支援給付法(仮称、以下、障害者自立支援給付法)を中核とする、いわゆる「改革のグランドデザイン案」の全貌が明らかになってきた。わが国の障害者施策史上、稀にみる大きな見直しであり、障害のある人びとの今後の社会生活に重要な影響を及ぼすことになろう。審議の舞台は国会に移されていくことになり、厚生労働省においては政令や省令、実施要綱などの策定にエネルギーが注がれることになる。しかし、問題点はまだまだ少なくなく、グレーゾーンの部分も相当残されている。今後、問題点をいかに好転させていくか、また政令や省令などの内容にも注文をつけていかなければならない。このことの具体化を図っていくためにも、先ずはグランドデザインなるものの実体を正確にとらえることである。つまり、ここに至るまでの経過や内容の特徴、評価、残された課題、これらをしっかりと押さえていくことである。本稿は、これらの全体とまではいかないが、そのポイントを記したものである。グランドデザインを深めていく上での一助となればと思う。

1.経過
 昨年1月8日、厚生労働省(以下、厚労省)は事務次官を本部長とする「介護制度改革本部」を設置した。同改革本部での検討課題の一つに、「介護保険制度と障害保健福祉施策との統合」が掲げられた。これを受けて、その直後の1月16日に、主要障害関連団体(以下、関連8団体、団体名は文末の注1参照)に対して同省の障害保健福祉部・塩田幸雄部長等より、厚労省としての基本姿勢についての説明がなされた。その内容は、「統合の方向で検討を進めていきたい」というものであったが、支援費制度についての「失敗宣言」を含めて全体として唐突感を抱かせるものであった。説明の席上、部長自ら「毎週でも話し合いを持ってもいい」などの発言があり、また関連8団体としても意見交換を図りたいとし、1月29日を皮切りに厚労省障害保健福祉部と関連8団体とのあいだで、「勉強会」と銘打っての意見交換会が開催されることになった(1月29日から4月1日にかけて都合9回開催、原則として毎木曜日夕刻2〜3時間程度)。
 他方、正規の検討の場として、介護保険制度との統合を中心テーマとする社会保障審議会障害者部会(以下、障害者部会)が開かれる運びとなった(第5回障害者部会として開会)。以来、障害者部会は約10ヵ月間にわたって毎月2回程度のペースで開催された。2005年1月25日の第24回障害者部会をもって、厚労省側の政策構想の全容が示されるところとなった。途中、6月18日の第13回障害者部会において関連8団体の代表者によって意見表明が行なわれた(1団体10分間ずつ)。この時の塩田部長の「まとめ」の発言の冒頭で、「障害保健福祉施策についての全体像を示すべきとの意見があったが、これに応えていきたい」旨の見解が述べられた。さらに7月13日の第15回障害者部会での厚労省側の提案文書に、「介護保険との統合も現実的な選択肢の一つ…」が明記され、「統合問題」についての障害保健福祉部としての基本的な考え方が示されたのである。その後、障害者部会は厚労省による次年度予算案概算要求の最終作業ならびにそれ以降の審議会・部会への備えなどもあり、9月24日の第17回障害者部会まで中断することになった。
 10月12日の第18回障害者部会において、厚労省は障害保健福祉施策に関するまとまった見解を発表した。提案文書のタイトルは、「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」(以下、グランドデザイン)というものであった。その内容は、部会審議のみならず、障害者部会と並行またはそれ以前の検討済みの事項などをも織り込むものであった。織り込まれた各種検討委員会等の主なものとして、@「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」、A「障害者の就労支援に関する省内検討会議」、B障害保健福祉部精神保健福祉課所管の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」、C「小規模通所授産施設及び小規模作業所等の今後の在り方に関する懇談会」などがあげられる。また、障害者部会と並行して開催されていた社会保障審議会介護保険部会とも調整が図られたものとなっている。
 当初の中心テーマは、介護保険制度と障害保健福祉施策との統合をめぐってであったが、これについては厚労省の思惑が外れる格好となった。自由民主党ならびに財界、全国市長会などの反対姿勢または消極姿勢によって、介護保険料の被保険者の年齢引き下げ問題とも深くリンクしながら介護保険制度と障害保健福祉施策との統合(途中から、「統合」ではなく「活用」という表現が用いられるようになったが)は、事実上断念せざるを得なくなった。統合の断念が確定的になったのは11月の下旬であり、障害保健福祉部が描いた当初の予想図とはだいぶ趣を異にして現在に至っているのである。少なくとも、当面は介護保険制度とはリンクしないグランドデザインとなりそうである。
 以上、「介護制度改革本部」が設置された以降、今日に至るまでの概要を記してきた。2月上旬には障害者自立支援給付法(仮称)を中心とする関連法律の新設・改正案が閣議決定されるとのことで、この過程で若干の変更があるかもしれないが、発表のあったグランドデザイン(案)や障害者自立支援給付法律案要綱、また「改革のスケジュール」(11月5日)や利用者負担の考え方(12月14日)などを併せみれば、その本質を掌握することができる。これを元に、グランドデザインを中心とするこの間の厚労省の障害保健福祉政策について、基本的な評価を加えてみたい。なお、国会での審議や今後示されるとされている障害程度区分等に関する諸基準や事業者に対する報酬基準の設定など、完成した政策として固まるまでにはさらなる曲折が予想される。本文が、最終的な評価でないことを断っておきたい。

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2.評価
1)評価の視点

 そこで、グランドデザインについての評価ということになるが、内容に入る前に評価の視点を明確にしておきたい。総括的な視点としては、「障害のある人びとが地域社会の一員として、個(個人)の尊重と私的な依存関係からの脱却を図り、安心と安定を実感できる生活を確保すること」ということになる。社会人であれば当たり前の姿であるが、一たび障害を有するとなると、この「当たり前の姿」が容易に実現し得ないのである。今般のグランドデザインが、社会人としての当たり前の姿を求める声にどれくらい応えられるのか、このことが素朴でかつ基本的な視点ということになろう。ただ、これだけでは余りに茫漠とした視点であり、評価そのものが抽象的になりかねない。そこで、もう一歩踏み込んだ詳細な評価の視点が必要であり、これについて以下に掲げることにする。
 具体的には、@扶養義務関連制度の見直し(当面は、扶養義務者ならびに世帯同居者の費用負担の完全撤廃、精神保健福祉法における「保護者規定」の撤廃など)、A地域生活が成り立つ所得保障制度の確立、B障害の定義、認定方法、等級制度の改訂、C障害関連福祉法の一元化、D「障害者差別禁止法」(仮称)の制定、E障害関連施設体系・施設制度の見直し(小規模作業所問題、小規模通所授産施設問題の解消含む)、F障害関連社会資源の飛躍的な拡充策の確立、G精神障害者の社会的入院問題・知的障害者の社会的入所問題の解消、H障害関連の雇用政策と福祉政策の統合の実質化、などである。なお、これらについては、本会として、また本会が加盟している日本障害者協議会において既に掲げてきた事項であり、昨年6月18日の第13回障害者部会での日本障害者協議会による意見発表においても主張したものである。また、以上に掲げた事項以外に、財政に関する視点も加えておきたい。それは、国の財政責任の明確化ということである。立ち遅れている障害保健福祉の分野にあって、全国的な水準を引き上げていくためにも、また限度を超えた自治体間格差を生じさせないためにも国の負担義務は不可欠な条件となろう。

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2)評価できる側面
 グランドデザインについて、以上の評価の視点に照らすならば、そこにさまざまな側面をみることができる。きょうされんをはじめ関係団体の長年にわたる実践と運動を反映している点、反映まではいかないがようやく萌芽として顕在化した点、他方で問題とされていながら改善されていない点、どうみても後退としか読み取れない点などである。また、未曾有の国家財政の危機とこれと関係しながらの競争原理主流の政策基調にあって、これによる影響も少なくないのである。残された日程の中で、改善されている点をさらに伸長させ、問題点や後退している点をいかに好転させていくか、ここにエネルギーを傾注していく必要がある。そこで、先ず評価できる側面から焦点を当ててみることにする。
 評価できる点の第一は、基本的な事業について、これが国の財政負担が明確となる「義務的経費」に位置付けられたことである。基幹的な社会資源(とくに働く場・活動の場、住まいなど)の整備状況が余りに不十分であり、自治体間格差のさらなる拡大が懸念される障害者施策にあって、基幹施策についての一般財源化(国からの支出予算ではあるが、具体的な使途は自治体の裁量に委ねられる財政運営の仕組み)への移行は阻止しなければならなかった。貧寒な障害者施策の現状からすれば当然のことであるが、昨今のなり振り構わない財政政策にあって(いわゆる三位一体政策を含めて)、一般財源化を防ぐことそれ自体が評価せざるを得ないのである。
 第二は、新設される福祉事業に関する実体法が障害種別を超えて立法化されることである(障害者自立支援給付法(仮称)として)。現行の障害者福祉に関する法律は、障害種別ごとに(身体障害者、知的障害者、精神障害者)、3つに分立している。分立していることによる弊害は少なくなく、障害種別間の施策水準の不合理な格差の温床となっている。また、複数の障害を併せ持つ者にあっては、いわゆる法の狭間に陥り、適合した支援が受けられない場合が少なくなかった。これらが一挙に解消されるとは思えないが、法的な根拠の上に制度面における3障害の枠組が共通になるという点では、一歩前進した形ととらえることができよう。
 第三は、複雑かつ不合理な施設体系、施設制度の見直しに着手したことである。旧厚生省と旧労働省所管のいわゆる施設(制度上は事業に位置付けられているものを含めて)は厳密に挙げれば、障害の種別や機能別に60種類近くに及んでいる。また、無認可の小規模作業所や制度として中途半端な小規模通所授産施設が、合わせて7000ヵ所にも及んでいるのも施設体系や施設制度の不備を主因とするものである。障害者プラン(1995年12月策定)においても、「再編・複合化の方向で検討する」旨が掲げられながら放置されてきた。遅きに失した感はあるが、また旧厚生省所管の施設制度(事業)に限定されているとはいえ、検討に着手したことそれ自体は評価できよう。
 第四は、他障害と比べて著しく立ち遅れている精神障害者の分野が、他障害と同テーブルで検討されたことである。行政組織上も身体障害者や知的障害者とは異なり(精神障害分野のみは「精神保健福祉課」という単独課となっている)、前述したとおり実体法も分かれ、また社会福祉施策に関する審議会も別仕立てとなっていた。元々、医療中心主義政策とされてきた精神障害分野であったが、今述べてきた状況とも重なりながら、社会福祉施策の他障害との開きは一向に縮まることはなかった。各種の施設や事業を含め、グランドデザインにおける基幹的な施策は障害種別を超えるとし、これによってある程度は施策水準の均等化が期待できよう。

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3)問題点
 以上、先ずは評価できる側面を述べてきたが、次に問題点を記すことにする。問題点については、基本的な事柄と個別的な事柄とを区分けして掲げてみたい。
 基本的な問題点の第一は、「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」と銘打ってはいるものの、グランドデザインの体を成していないということである。グランドデザインと言うのであれば、少なくとも先に述べた具体的な評価の視点(事項)が網羅されるものでなければならない(少なくとも、検討を約するぐらいは)。肝腎な事柄が脱落し、あるいは極めて不十分な内容と言わざるを得ない。先ず、総合性を標榜しながら、難病という一大障害群が他障害と同等に位置付けられていないことは決定的な欠陥である。また重点的な政策課題とされていた、障害の定義や認定制度の根本的な改訂、本格的な所得保障制度の確立についても、全く触れられていない。障害者施策に慢性的な不全感を覚える最大の要因に社会資源の絶対数不足が挙げられるが、これについての国の方針は明示されていない。昨年8月の時点で(次年度政府予算概算要求時に)、社会資源の増設を図るための一環として「臨時措置法」という形での特別立法の可能性が取り沙汰されたが、途中で立ち切れとなってしまった(与党への説明資料に掲載)。さらには、厚生労働省が策定するグランドデザインであれば、障害のある人びとの地域生活を拡充するという観点から、旧厚生省と旧労働省との統合効果が発揮されなければならないはずであるが、そうはなっていない。旧労働省部署の関与が全然図られていない。就労支援策が全体として歯切れが悪いのも、このことが多分に影響しているのである(新制度に「就労継続支援事業」というのがあるが、これが実質化するためには仕事の安定供給策を含めて労働部署との連係が不可欠である。しかし、現時点でそうした体制はとられていない)。たしかに様々な要素が含まれているが、肝腎な事柄が脱落しているという点において、グランドデザインとは呼称できるものではない。
 第二は、利用者の費用負担について「応益負担」制度に切り替えたことである。審議会の意見や関係者の反発があって、急遽その呼称を「定率負担」制度と変更したが(12月末の時点で)、その本質は変わるものではなく、本稿では応益負担と表記する。前述したとおり、基幹的な施策の主要なものが義務的経費となっているわけであるが、この時点で財務部署との間で応益負担制度の導入が条件とされたものと推測される。前述したような評価できる側面をすべて打ち消して余りあるのが、この応益負担制度なのである。ここに、グランドデザインの本性を見る思いがする。国の負担を伴う義務的経費制度を採った以上、利用者負担増は免れない、これが財務部署の意向を背負った障害保健福祉部の公式な言い分なのである。そもそも、「義務的経費だから応益負担」といったセット論それ自体が妥当なのだろうか、障害者政策の本流に照らすならば正道とは思えない。社会福祉の真髄を忘れた、単なる財政政策でしかないのである。障害のある人びとがグループホームで懸命に地域生活を維持しようというのが「益」なのだろうか、働く場や活動する場に通い社会参加を果たそうというのが「益」なのだろうか、障害と疾患を併せ持つという特性を有する精神障害者や難病者の医療受診が「益」なのだろうか、どう考えても「益」などという代物ではないのである。他の同年齢の市民と同等の権利を確保または近づくためのぎりぎりの手段が、障害者施策なのである。また、障害のある人びとの生活実態からみて、その多くが負担しようにも余力が無いのである。障害基礎年金(1級は月額約82,700円、2級は月額約66,200円、多くは2級年金)を唯一の、あるいは主要な収入源としている状況下で、もしここから応益負担を求めるとすれば、その結果は自ずと見えてくるのである。すなわち、一つには各種事業の利用を必要以上に自制することであり、二つには同居者を中心に家族に負担が及ぶことである。いずれも、障害のある人びとの権利性という視点からは程遠く、障害者施策の後ずさりと言わざるを得ない。加えて、法定の社会資源が圧倒的に不足している状況下にあっての応益負担制度がどのような影響をもたらすか、これについても付言しておきたい。利用者と事業者との直接契約方式がより進んでいくことになろうが、事業者側の圧倒的な「売り手市場」にあって、応益負担に応じにくい者が不利になることは容易に想定できる。つまり、事業者側が支払能力を加味しながら利用者を選択するという、いわゆる逆選択が横行することになろう。
 次に、個別的な問題点をあげてみたい。その第一は、障害関連の福祉法が一元化されることなく、それぞれが温存されることになったことである。先の「評価できる側面」において障害者自立支援給付法の新設をあげたが、これはあくまでも社会福祉分野に関する実体法が初めて障害種別を超えたことを評価したものである。ただし、これは給付事業に限定しての統合法であり、関係団体が切望していた障害関連福祉法(身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法)の一元化は成らなかったのである。例えば、知的障害者福祉法から各種給付事業を抽出することになれば、実体として何が残るのだろうか、ほとんど実体法の体を成さなくなるのである。厚労省は将来の完全統合への一里塚というが、どうしてこうした中途半端な法形態を刻まなければならなかったのか、理解に苦しむ。障害分野の社会福祉規定が二重となることで新たな混乱が生じないか、懸念されるところである。もし、障害者自立支援給付法の制定を先行させるというのであれば、少なくとも精神保健福祉法の「医療」と「福祉」との分離を含めた、障害関連の福祉法の完全統合をどのように図るのか、その方向性とスケジュールをグランドデザインならびに障害者自立支援給付法の付則等で明記すべきである。なお、新法の名称についてであるが、「障害者自立支援給付法」とするのであれば、少なくとも「給付」は余計であり、削除すべきである。「給付」という概念と権利性や自立という考え方などとは、およそ相容れるものではない(ちなみに、「給付」とは:公共機関が金や品を与えること。(角川、国語辞典より))。
 第二は、施設体系、施設制度の見直しが不完全に終わっていることである。これについても、「評価できる側面」に掲げたが、見直しそのものは評価できるとしても、問題はその水準である。当初想定されていた水準からみれば、トーンダウン、というよりは変質してしまったのである。とくに注目していた就労・活動(アクティビティ)の場についてであるが、厚労省と関係団体との間でほぼ合意にあったいわゆる「3類型」に基づく再編が成らなかったのである。@就労移行支援事業、A就労継続支援事業、B生活支援事業、C地域活動支援センター(当初は、デイサービス事業と明記されていた)、の事実上4類型となっている。4類型となってしまった要因としては、「A就労継続支援事業(雇用関係を前提とした事業)」の対象者が当初の想定よりも狭くなり、現行の授産施設の多くが移行できる場として新たなセクションを設けなければならなくなったことがあげられる。「B生活支援事業」の対象者を「常時介護を要する者」と絞ったために、「C地域活動支援センター」が授産施設等の大量移行先となっているのである。問題は2点あり、一つは、「A就労継続支援事業」に相当数の授産施設等が移行するための絶対的要件として仕事の安定確保があげられるが、これがうまくいっていないということである。具体的には、労働部署(障害者雇用対策課)との連携の下で、仕事発注企業への優遇策(雇用率への参入換算、税制上の優遇など)の創設などであるが、ことごとくこれが不調に終わっているのである。このままでは、現行の福祉工場の二の舞を踏むことになり(仕事の安定確保の行き詰まり)、このセクションへの移行が極端に減少することになろう。今ひとつは、「C地域活動支援センター」のみが「個別給付」(義務的経費)から省かれ、裁量的経費の下での事業運営となることである。同じ日中の活動を支える社会資源にあって、義務的経費と裁量的経費とに分かれるのは不合理であり、「個別給付」に一本化すべきである。なお、合わせて7000ヵ所に及ぶ小規模作業所ならびに小規模通所授産施設と施設体系の見直しとの関係についてであるが、当初から強調されていた「個々の機能に応じて移行できるようにする」が果たしてどんな形で実質化されるのか、現時点でははっきりしていない。
 個別的な問題の第三は、地域における相談ならびに調整のための窓口機関が一元化していないことである。就労部門と福祉部門との統合、障害の程度に関わりなく一本化された窓口機関、これが成らず旧態依然の二元窓口になってしまっているのである。その理由としては、就労(公共職業安定所)は国の行政組織であり、福祉(福祉事務所)は自治体の行政組織であり、この二つが統合することは現行法では難しいというのである。いかにも、利用者不在の発想である。旧来から言われてきた、「たまたま遭遇した窓口によって一生が決定付けられてしまう」(公共職業安定所か福祉事務所のいずれかを訪れるかによって)、こうした偶然性の高い進路決定は解消されそうにない。
 第四は、「障害者給付審査会」(以下、審査会)の性格や体制についてである。支援の内容と水準の適正さを担保していく上で、決定的な役割を担うとされている市区町村に設置される審査会であるが、いかに実質化するか懸念されるところである。審査の基準や人員構成がはっきりしないが、正規委員に障害のある当事者の参加を義務付けるなど、客観性や専門性が保たれるものでなければならない。とくに、専門性については、医師などの学識経験者がその代表格のように考えられているが、決してそうではない。医学モデルから社会生活モデルへの切り換え、また環境因子を重視しようという考え方の尊重など、障害のとらえ方が発展している中にあって、当事者の視点は当然「専門性」の一角を担うものとなろう。人員構成にあたっては、当事者の参加を義務付けるべきである。

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3.審議・政策検討の進め方についての意見
 わが国の障害保健福祉政策の歴史にあって、今般のグランドデザイン策定を中核とする一連の検討は、極めて重要な意味を持つことになろう。それだけに、厚労省における政策検討の進め方や審議会のあり方が厳しく問われるのである。結論から言えば、この点については不満が残る。これほど重要な検討作業でありながら、いくつかの点で看過できない問題点や弱点をみることができる。主なものを、以下に掲げてみたい。
 その第一は、これほど大規模な見直しにあって、基礎的なデータが余りに不備であるということである。支援費制度の弱点として、「ニーズ爆発に応じきれない」などの説明がなされていたが、決して突然ニーズが噴出したわけではなく、ニーズの見積もりが完全に誤っていたのである。というよりは、正確なニーズ調査がなされないままの制度設計だったのである。基礎データが十分でない中での政策検討というスタイルは、今回も変わってはいない。部分的には関係団体の調査結果などを活用したとされているが、これほどの見直し作業であり、基礎的なデータについては国が直接把握すべきではなかっただろうか。結局、検討に直に携わった行政官の主観や審議会委員の意向がベースとなって、方向付けがなされていったのである。なお、基礎的なデータについては、ニーズ調査などの国内データもさることながら、海外の資料も含まれなければならない。とくに、北部・中部ヨーロッパでの障害者施策には魅力的なものが少なくないが、これらに耳を傾けることはほとんどなかった。
 第二は、結論を出すのが余りに性急過ぎるということである。新たな法律の制定や関連法律の改正など、結論は出ていないというかもしれないが、しかし実際には昨秋のグランドデザインの発表をもって基本的な枠組みは定められたといってよかろう。新たな障害保健福祉施策のあり方をテーマとした正規の審議会が開始されたのは昨年3月のことで、半年余りでグランドデザインという名で大きな方向付けがなされたのである。この検討の流れについていけた者がどれくらいいただろう。障害者団体の中心メンバーなど、ごく一部の人に限られていたのではなかろうか。しかも、厚労省側が示した単一な方向性のみで、検討が進められていったのである。いわゆる「ワン・モデル・シュミレーション」方式。この点では、重大政策の決定時に複数案を示すことの多い欧米とは随分とプロセスが異なるのである。いずれにしても、当事者や地方自治体の意見の尊重や複数案を吟味できるだけの時間の確保など、もっと必要な時間をかけるべきである。
 第三は、障害を有する当事者の意見や要望の反映が余りに不十分であるということである。たしかに、審議会には障害者団体の代表が参加し、今回は審議会とは別に関係8団体の代表とも意見交換が図られた。また、団体個々に対して、説明の機会や懇談がもたれたようである。それでも、ごく一部の当事者でしかなく、とくに地方の当事者との接触は全くといっていいほどなされていないのである。むろん、一定のテンポでの検討であり、当事者の意向をどこまで汲み取るか、難しい問題である。今回に限った話ではないが、今後の課題として、意見集約の技術的な検討を含め、とくに地方在住者の要望や意見を聴取する仕組みをつくるべきである。
 第四は、審議会のあり方についてである。これも、前述の「当事者の意見反映が不十分」と同様に、今般のグランドデザイン策定に限ったことではないが、今回もその問題が露呈するところとなった。最大の問題点は、審議会が形骸化していることである。具体的には、実質的な審議時間が余りに少なく、行政提案の「承認セレモニー」の場と化してしまっていることである。回を重ねた今回の社会保障審議会障害者部会ではあるが、一回当たりに要する二時間程度のうち、半分以上が行政説明に当てられるのである(多いときは、1時間半にも及んだ)。毎回が非常に重いテーマであり、判断に迷うはずであろうが、質疑応答や意見交換は30分から40分程度で片付けられてしまっているのである。到底深まるはずがなく、座長(実際には厚労省側の担当者)が聞き置くだけとなっている。人選の視点や審議の方法など、審議会(部会を含め)のあり方全般にわたって根本的に見直していく必要がある。

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4.当面の課題
 審議の舞台は国会に移されていくことになるが、障害程度区分の基準(受給権や事業選択に際しての尺度)や報酬基準(事業体への公金支弁の基準)の設定など、厚労省として準備しなければならない事項もまだまだ少なくない。全体としては、最終局面に入っているが、先に掲げた「評価できる側面」をいかに伸長させ、「問題点」をいかに好転させていくか、関係者のもう一段の努力が求められる。最後に、当面の課題として、欠いてはならない事項をいくつかあげておきたい。
 第一は、厚労省への注文である。グランドデザインにまつわる諸基準の作成にあたっては、良質で高い水準となることを期待したい。例えば、「介護給付」や「訓練等給付」を利用するにあたっての入り口的な基準となる「障害程度区分」については、あくまでも社会生活モデルを主体とすべきであり、いわゆる環境因子(国際生活機能分類での強調事項)についても勘案すべきである。手帳制度などで多用されてきた医学モデルを中心とするものであってはならず、また支援費制度で用いられている障害程度区分についても問題点が少なくなく、そのままの流用は避けなければならない。とくに施設体系が大きく変わることになっているが、いずれの類型を利用することになるのか、その選択や斡旋に際しての妥当性、客観性のある基準設定が求められる。事業者に対する報酬基準についても提示されることになろうが、障害分野での人材が痩せ細っていくことのないよう、相当な人材確保が現実的となるような基準設定を求めたい。厚労省に対しては、これ以外にも、障害保健福祉施策全体に関わる「障害の定義」や障害認定制度の改訂、労働省と厚生省との統合効果を活かした障害行政組織の改組などについても見直しを要望したい。少なくとも、検討の視点やスケジュールについては、最終的な審議が終了するまでに示すべきである。
 第二は、国会での審議を実質的なものにしてほしいということである。障害者自立支援給付法の制定(創設)をはじめ、障害福祉に関連した法律が一括して審議されることになる。その審議は多岐にわたることになろう。「実質的」という意味には、いくつかの要素が含まれる。先ずは、審議の時間を十分に確保することである。衆参両院における厚生労働部会の時間確保はもとより、その前段で政党ごとの吟味を存分に加えてほしい。とくに、先に掲げた「問題点」については、立法府としても徹底的に探究すべきである。また、障害のある当事者の代表を含め、できる限り多くの関係団体が参考意見などの意見表明を行なえる機会をつくってほしい。
 第三は、われわれ自身に問われている事柄、民間団体としてこの時期何に重点を置くべきかということについてである。この点で最も大切なのは、当事者のニーズや生活実態に裏付けられた発言を重ねていくことである。厚労省に対して、国会に対して、自治体・地方議会に対して(国への要請を含めて)、マスコミに対して、強力に働きかけていくことである。手持ちのデータの活用や緊急調査などを行ないながら、実証的で核心を突くような主張を準備していかなければならない。また、団体間の連携も重要である。障害関係団体がまとまらないようでは、厚労省や国会への影響力は弱体化することになろう。団体ごとの重点事項は異なろうが、しかし基本的な問題点などについては連携や結束を図りながら共同行動をとっていくことが肝要である。共同行動の質と量が、決定的な意味を持つことになるのではなかろうか。

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注1)
社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 会長  兒玉 明
日本障害者協議会 代表  河端 静子
特定非営利活動法人 DPI日本会議 議長  三澤 了
社会福祉法人 日本盲人会連合 会長  笹川 吉彦
財団法人 全日本聾唖連盟 理事長 安藤 豊喜
社団法人 全国脊髄損傷者連合会 理事長 妻屋 明
社会福祉法人 全日本手をつなぐ育成会 理事長 藤原 治
財団法人 全国精神障害者家族会連合会 理事長 小松 正泰

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