障害者総合支援法案に関する見解

 2012年3月13日  きょうされん常任理事会

  本日(3月13日)、「障害者総合支援法案」(以下、法案)が閣議決定され、現在開会中の第180通常国会への上程手続きがとられた。経過的にも内容的にも、到底納得できるものではないことをここに表明する。その問題点を以下のとおり指摘し、自立支援法訴訟基本合意文書と総合福祉部会の骨格提言に基づいた再考を強くもとめるものである。

 第一は、経過からみた問題点である。そもそもこの法案検討は、2010年1月7日の自立支援法訴訟基本合意文書での自立支援法の廃止とそれに代わる新法を当事者などの意見をふまえて作る、との確約が出発点にある。これは民主党のマニュフェスト、裁判所での和解調書、閣議決定、首相や厚生労働大臣の国会答弁などで繰り返し公の約束事となってきた。そのため政府審議体である総合福祉部会において当事者等が参画して新法の骨格提言がとりまとめられた。ところが2月8日に示された厚労省案は、骨格提言の水準とはほど遠く、内実は自立支援法の部分修正でしかなかった。その基本的な枠組みを変えることなく、修正程度で民主党はこれを了承し(民主党厚労部門会議にて、座長は基本合意書を調印した当時の厚労大臣の長妻昭氏)、本日の法案の閣議決定に至ったのである。新法づくりに費やしてきた多大な時間と労力を無にしただけではなく、全国の障害のある人や家族、関係者の期待を裏切るものであり、文字通りの背信行為と断じざるを得ない。

 第二は、自立支援法違憲訴訟に伴う基本合意書との関係にみる本質問題である。基本合意文書には、「障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する」と確約している。しかし、今般の法案は、自立支援法の115条項のうち108条項はほぼ手をつけていないことに象徴されるように、法律の形式面からみても廃止とはおおよそほど遠い。
 真の「廃止」とは、自立支援法の基調となっている障害を自己責任とする考え方や成果主義と市場原理に基づく仕組みによって、利用を抑制したり、障害のある人と事業者の利害を対立させるようなあり方をあらため、障害のある人を保護の対象から権利の主体へと切り替えることである。厚労省と民主党は、自立支援法の名称・目的・基本理念の文言上の変更をもって「実質的に廃止となっている」と説明する。しかし、目的条項に地域生活の権利が明記されていないどころか、基本理念に「可能な限り」という文言を盛り込むなど自立支援法からも後退している面がある。また、家族収入を含めて応益負担を課す仕組みは厳然と残されたままである。これをもって「廃止」と言うのは余りに誠実さを欠くものであり、詭弁以外の何物でもない。
 なお、法を全廃して新法を制定すれば自治体や事業者などの現場が混乱するとの見解が示されているが、これは明らかに間違っている。現場を混乱させてきたのは誤った考え方と不完全なまま運用を続けてきた自立支援法そのものであり、だからこそ施行後三度にわたって大修復を余儀なくされたのであり、骨格提言はこれに終止符を打つものである。明確な方向性と時間軸を備えている骨格提言こそが、混乱防止を裏打ちしているのだということを強調しておく。

 第三は、内容面での問題である。前述した理念条項の「可能な限り」は、自治体の不熱心さに対する免責条項に成り得る重大な欠陥である。利用者負担については、「家計の負担」を前提とした応益負担の仕組みが残されたままで、基本合意で当面の重要課題とされた自立支援医療制度の解決も見送られている。また、障害者の範囲は、「一定の難病」を加えるとしているが、これは難病の間に格差を持ち込むもので、引き続き全ての障害者を法の対象としていないという点で「制度の谷間」を残したままとなっている。障害程度区分に代わる支給決定のあり方について、またパーソナルアシスタンス制度や就労支援を含む福祉サービスのあり方については、三年間で検討するとしているが、目標の明示や検討体制が不明なままで、さらなる先送りや先細りが懸念される。報酬制度についても、事業運営の極度の困難性や非正規職員の急増を正視することなく、その温床である日額払い方式への批判的な見解がなされていない。以上の点だけでも骨格提言と新法との乖離は余りに大きい。

 きょうされんは、基本合意と骨格提言が尊重された障害者権利条約の批准に値する法律となるよう、国会上程後も引き続き多くの障害のある人びとや団体、市民の皆さんと手を携えて、あきらめることなく力を尽くしていくことを表明する。

■PDFファイル 障害者総合支援法案に関する見解 (163KB)

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