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月刊きょうされんTOMO【2018年12月号】特集「ともに生きる ともに創る~夢ある未来へ京都から~ 第41回全国大会in京都」

参議院厚生労働委員会にて参考人招致

 11月20日、本日参議院厚生労働委員会で、「障害者雇用水増し問題」についての参考人招致が行なわれました。
 公益社団法人やどかりの里常務理事の増田一世さんが、参考人の一人として立たれました。

●動画(参議院インターネット審議中継)
 増田氏発言部分
 すべて
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増田一世(公益社団法人やどかりの里)

  本日は,発言の機会を作っていただき,ありがとうございます.私は,埼玉県さいたま市で活動する公益社団法人やどかりの里で働いています. やどかりの里は精神障害のある人たちの生活支援,働くことの支援などを行い,現在370人ほどの方がさまざまな形でやどかりの里を利用して,地域生活を送っています.

 精神障害は中途障害です.病気や障害を受け止める時間が必要で,その中で働くことへの意欲も生まれてきます.自分の病気や障害と向き合いながら長く働き続けることを目指している人たちがたくさんいます.

  障害のある人たちがどんな思いで働いているのか,彼らの声を紹介します.私が代表を務めるやどかり出版の「働きたいあなたへのQ&A」から紹介したいと思います.

 今回の障害者雇用水増し問題は,働きたい,働いて生計を立てたいと願う人たちの働く機会を40年あまりにもわたって奪ってきたということなのです.

  障害があることを会社や周囲の社員の人に伝え,フルタイムで働くAさん,「浪人中に幻聴が聞こえるようになり,大学入学後も幻聴に悩まされ,精神科病院に入院,退院後体力も衰え,コンビニでのアルバイトも辛くて,精神障害者の作業所で体力的・精神的に充電し,就労準備の訓練を経て,同じ病気の仲間との交流も支えとなり,実習先だった企業に就職しました.細かいことにこだわる傾向があるので,余計なことを考えないように無理しないように気をつけて働き続けています.働き続けたいという目標が気持ちの張りになっている」と語っていました.

 Bさんは働く上での工夫を語っています.「朝,薬が抜けなくて困っているが,少し早く出てコンビニでコーヒーを飲んでゆっくりし,職場に30分前に着くようにしている」「ストレスを感じると持病が出て胃が痛くなる.それによってストレスを自覚するのでストレス発散のためバレーボールなどで体を動かす」「不眠や物事を関連付けてしまうこと,猜疑心が強くなることが調子の悪くなり始めなので,早めに休養をとるようにする」

再検証を求めて

  さて,私が関わっている日本障害者協議会(JD)でもこの問題を深刻に捉え,声明や要望書を提出してきました.

 そして,この障害者雇用水増し問題の検証に障害当事者,関係者の参画を求めてきましたが,それはかなわないまま国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会が始まってしまいました.40年以上にわたる違法行為を検証するのにたった2カ月という短期間で,報告書が発表されました.死亡した人や退職者,うつ状態や不安障害を身体障害として算定するなど,びっくりするような対応がまかり通っていたことを知りました.しかし,それらの不適切な対応は,厚生労働省の障害者雇用の実態についての関心の低さ,対象障害者の計上方法についての正しい理解の欠如,法の理念に対する意識の低さによるものと報告されました.これでは長年にわたる法律違反がなぜ続いてきたのか,まったく解明されていません.

 私たちが知りたいのは,なぜ関心が低かったのか,なぜ正しい理解が欠如していたのか,なぜ意識が低かったのか,この「なぜ」なのです.恣意的だが意図的ではないとなぜ言えるのかも疑問が残ったままです.

 平成26年の独立行政法人労働者健康福祉機構による障害者雇用の虚偽報告については,元理事らが罰金刑の刑事処分を受けています.しかし,検証報告では,法律違反の事実をあいまいにし,1112日には厚生労働省の「違法行為はなかった」との表明があり,他の省庁も職員の処分を見送るとしています.しかし,今回の水増し問題は長年にわたる違法状態であり,障害者排除であったことは紛れもない事実です.雇用されるべき人が雇用されなかった不利益を被っており,「固有名詞なき被害者」の立場に立った政治責任が問われなくてはなりません.この違法状態を長年放置してきた各省庁の大臣や幹部の監督責任も問われるのではないでしょうか.

 改めて今日を契機に国会での徹底解明と障害当事者・関係者が参加する徹底的な再検証の場を設けることを求めたいと思います.

 障害者雇用と環境整備について

  お手元の資料に障害者権利条約の全文があります.日本も締約国です.第3条の一般原則,第4条の一般的義務,第5条の平等及び無差別を踏まえ,第27条の労働及び雇用に記されている「公的部門において障害者を雇用すること」を重く受け止め, 障害のある人の労働及び雇用制度を抜本的に見直す機会にすべきだと考えます.

 なぜ,多くの省庁で障害のある人を排除することが続いてきたのか,そのことの解明抜きに中央省庁での障害者雇用の推進は困難でしょう.国家公務員障害者選考試験が始まりますが,第1次選考の試験には高等学校卒業程度の問題が出題され,作文試験があります.こうした選考試験も1つの方法ですが,これがすべてではないはずです.知的障害のある人,精神障害のある人,発達障害のある人が中央省庁で雇用されているのは少数であり,それぞれの障害特性に応じた採用方法や働き方が工夫されなくてはならないでしょう.

  そして,障害のある人が健康を守って働き続けるためには,多様で継続的な支援が必要です.アクセシビリティーの観点での省庁全体の環境整備が求められます.もう1つが個々に応じた支援としての合理的配慮の提供です.通勤時の支援,職場でのジョブサポーターの配置,定期通院時の休暇の保障,障害にあわせた仕事の確保や作業手順の改善,休憩のとり方など,また通勤や長時間労働が困難な人に対しては,在宅勤務やテレワークなども視野に入れるべきでしょう.障害者雇用と国家公務員定数法の関係も検討が必要でしょう.

 採用を進めることと職場環境を整えることは同時並行で進めなくてはなりませんが,その準備は各省庁でどのように進められているのでしょうか.数合わせの障害者雇用にならないように細心の注意と準備が必要です.

 障害者権利条約は「障害は環境によって重くも軽くもなる」と言っています.各省庁の職場環境の整備が全国の事業所のお手本となるように推進していくことを期待しています.

 今後の障害者の労働及び雇用について考えなくてはならないことがあります.

 1つは法定雇用率です.ドイツは5%,フランスは6%です,日本の公的部門の2.5%はあまりに低すぎないでしょうか.そして,重度の障害者をダブルカウントする制度は廃止すべきです.これは事業所側の論理でしかないのです.

2つ目には労働及び雇用政策における「障害者」の捉え方です.現在の障害者手帳に基づく障害等級の判定は医学モデルです.障害の社会モデルの視点を踏まえた障害の判定方法が求められています.

3つ目には,公的部門にも障害者雇用納付金制度や何らかのペナルティ制度を検討する必要があります.

 最後に政策審議システムの根本的な改革を求めたいと思います.

  障害者の労働及び雇用政策の発展のためには,労働分野と福祉分野を重ねた検討が必要であり,現在の労働政策審議会障害者雇用分科会に相当数の福祉分野関係者を加えることや審議会のメンバーに障害当事者代表の枠を強化するなど,政策審議システムの改革も求められていることを述べて,私の意見とさせていただきます.ご清聴ありがとうございました.

●提出資料
 1再検証求める要望書(JD)
 2障害者雇用政策要望書
 3障害者権利条約

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