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月刊きょうされんTOMO【2018年12月号】特集「ともに生きる ともに創る~夢ある未来へ京都から~ 第41回全国大会in京都」

衆議院厚生労働委員会にて参考人招致

IMG_2507 1 121日、衆議院厚生労働委員会で、「障害者雇用水増し問題」についての参考人招致が行なわれました。

 きょうされんの藤井克徳専務理事が、日本障害者協議会代表の立場で、参考人の一人として立ちました。その内容を紹介します。なお意見陳述は限られた時間なので、論点を絞って話をしています。 

●動画(衆議院インターネット審議中継)
 藤井発言部分(当リンク先の「説明・質疑者等(発言順):」のうち、上から3番目の「藤井克徳…」を選択ください)
 すべて(最上部の「はじめから再生」を選択ください)
 ※初めてご覧になられる場合、PCまたはスマートフォンの視聴環境設定が必要となります。


■衆院厚生労働委員会参考人意見陳述 藤井克徳

  「障害者をしめ出す社会は弱くもろい」、これは1981年の国際障害者年に関連する決議文の一説です。今般の障害者雇用の「水増し問題」(以下、水増し問題)に照らすならば、「障害者をしめ出す政府は弱くもろい」、こう言えるのではないでしょうか。

  水増し問題の最初の報道、そして続報を聴いての率直な感想を述べたいと思います。まず、最初の報に接したときですが、「まさか」であり、時が経つにつれ、怒りの念に代わっていきました。次の節目は、検証委員会の報告書が報じられた時でした。唖然としました。その内容は、経過報告の域を出るものではありませんでした。検証報告書の評価については、後でもう少し詳しく述べます。そして、次に期待していたのは、第197臨時国会での総理大臣の所信表明です。政府あげての水増しまみれにあって、政府の代表として何を言ってくれるのか、全国の障害当事者、関係者は注目していました。残念ながら、一言も触れられることはありませんでした。

 今般発覚した水増し問題は、余りに大規模であり、余りに長期間に及び、そして余りに悪質です。規模で言えば中央省庁諸機関のうち8割以上が関わっています。いつからかに至っては、最低でも20年間余、1960年の法律創設時からという見方もあります。悪質さで言えば、裸眼視力をそのまま障害者の範囲に含めたり、100人近い退職者や死亡者まで現存する障害者としてカウントしていたのです。「役人は数字をつくる」という言い方があるそうですが、そう言われても仕方がないのではないでしょうか。

  ここで水増し問題の構図について、簡単に述べておきます。大きく見て五段階かと思います。第一段階は、障害者を新たに外部から雇い入れたくないということ、第二段階は、そうは言っても法定雇用率は守らなければならない、そこで第三段階では、しからば内部から障害者を探し出そう、第四段階に移って、いなかったらつくりだそう、退職者や死亡した人のカウント参入はその典型です。そしてやれやれ今年もクリアできた、これが五段階です。この五段階を毎年くり返してきたのではないでしょうか。

 最大の問題点は、今述べたうちの第一段階です。「できれば外から新たに障害者を採りたくない」です。実は、ここに今般の水増し問題の主因があり、本質があるのです。検証の対象も、ここにあります。結論から言えば、「障害者排除」です。もう少し突っ込むならば、本年、急浮上した優生思想の下で繰り広げられた優生保護法の被害問題の本質とも通底するのではないでしょうか。共通して、「官製の障害者排除」と断じることができます。

 それでは、なぜ障害者排除が平然と続いてきたのでしょう。はっきり言えば、うちの省庁の労働力の全体が低下してしまうから、あるいは職場のバランス、働き方の生態系のようなものが壊れはしないか、こんな懸念や不安が容易に想像されます。労働力が低下するというのであれば、どういう支援があれば低下しないのか、どういう条件であれば職場のバランスが保てるのか、そういう発想にならないのでしょうか。もしかしたら、障害者雇用とは別に中央省庁の現行の働き方や慣行にも問題があるやもしれません。

  次に、水増し問題がもたらした問題点について概観します。5点に絞ります。

 第一は、おびただしい数の障害者が、国の機関での働く場が奪われたことです。「固有名詞なき被害者」の数は一体どのくらいに上るのでしょう。昨年だけでも3880人余とされています。虚偽の報告による累計値について明確にすべきではないでしょうか。

 第二は、長きにわたり、誤ったデータで障害者の雇用政策を論じてきたことです。公的部門での障害者雇用は概ねうまくいっていたことになり、公的機関に焦点を絞った議論はほとんどなされてきませんでした。国会も労政審も、そして私たち障害者団体も翻弄されていたのです。とり返しのつかない事態を招いていると思います。

 第三は、有形無形で、民間企業の障害者雇用にも影響することです。当然ながら、障害者雇用に関する行政指導は鈍り、民間の側の心理状態も不信感が増すのではないでしょうか。実際にも、次期通常国会で準備されていた、障害者雇用納付金制度の対象規模の拡大(現行の従業員100人規模から50人規模へ引き下げ)が見送られるとの報道があります。

 第四は、各省庁が発信する政策に少なからず影響があることです。政策の源は、一般的に審議会の事務局、すなわち担当省庁の局や課、時には係とされています。この政策形成の源の段階で障害者の目線が入っているのとそうでないのとでは、その内容や水準に大きな差異が生じるように思います。

 第五は、障害者政策に関する政府のデータに不信感が生じたことです。障害者の、人権や、ときに命に係わるデータが本当に正しいのだろうか、そんな気持ちになります。基礎的なデータに関しては、総点検の必要があります。

  次にあげたいのは、本件に関する検証委員会の報告書と、これに連動して出された基本方針についてです。率直に言わせてもらえれば、不十分です。不十分だけではなく、不信感が重なります。検証委員会報告書と基本方針の両社に共通する問題の第一は、非常に浅薄であるということです。これほどまでに深刻な問題であり、積年の課題でありながら、たった一か月余で結論を出すというのは余りに乱暴ではないでしょうか。第二は、検証委員会の報告と基本方針の提出時期が不自然であることです。これらはほぼ同時に出されました。言い換えれば検証委員会の軽視であり、今回の水増し問題の中心省庁である厚労省の主導による筋書き通りの着地点、そんなふうに言っていいのではないでしょうか。第三に、検証委員会も基本方針の策定に際しても、障害当事者が不在だということです。一般的に、検証というのは、何を検証するかよりも、誰が検証するかが決定的な意味を持つのです。両者とも、看過できない弱点を残したと言えるでしょう。

 そこで、検証報告書について、簡単に感想を述べます。通読して思うのは、「関心が低かった」「意識が低かった」「積極性がなかった」「恣意的だった」「杜撰だった」などの感覚用語が目立ちます。とても、政策総括や政策検証とは思えません。私たちが求めているのは、「なぜ関心が低いのか」「なぜ意識が低いのか」「なぜ恣意的だったのか」、この「なぜ」に光を当ててほしかったのです。残念ながら、それとはほど遠いものです。障害当事者の代表を加えての再検証を行なうべきです。

 もし、検証委員会の結論が正しいとすれば、国を動かす公務員が、無意識のうちに、無関心のうちに、法に違反する行為を繰り返してきたことになります。これはこれで、故意よりも、意図的よりも、もっと恐ろしいことです。

 気になるのは、いきなり4000人の障害者の採用を図るという動きです。多くの関係者と同様に、私も拙速だと思います。

  最後に、今後の課題について述べます。今回の政府機関による不正、不祥事を何としてもこの国の障害者雇用政策の抜本改革の転機にしていかなければなりません。改革の方向性については、資料のNPO法人日本障害者協議会の意見書を参照ください。ここでは項目のみを列挙したいと思います。

・法定雇用率の見直し

・労働政策における障害のとらえ方の改訂

・納付金制度の導入を含む、公的部門における障害者雇用の不祥事の何らかのペナルティ制度の創設

・公的部門における障害者雇用に関する監視システムの確立

・障害種別に配慮した採用時の試験制度の見直し

・安定した雇用生活を維持できるための多様な政策の構築。重要になるのは合理的配慮の制度化。とくに、福祉施策との一体展開。福祉施策にある同行支援やヘルパー支援を雇用場面でも使えるようにすることなど。

・障害者雇用政策の審議システムの抜本的な改革を

  障害者権利条約の定義条項には、障害を理由とする排除は差別に当たると明記されています。また、第8条には、定型化された観念、偏見、有害な慣行と戦うこととあります。立法府としても戦ってほしいと思います。

●提出資料
 1再検証求める要望書(JD)
 2障害者雇用政策要望書
 3障害者権利条約

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